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HACCPの重要管理点(CCP)の重要性と判定方法を詳しく解説

 

HACCPでは危害要因分析(HA)と重要管理点(CCP)に分けられます。
HACCPの導入の際にはCCPの概念を理解することが大切です。

 

しかし、重要管理点の重要性の理解が進んでいなかったり、重要管理点の判断方法が分からないと、HACCPの取り組みも上手く行かなくなってしまいます。

 

そこで、この記事では重要管理点(CCP)とは一体どのようなものなのか、重要管理点はどのように判定したらよいのかなどについて解説します。

 

重要管理点(CCP)とは

 

重要管理点(CCP)はCritical Control Pointのことで、食品からハザード(リスク)を取り除くために特に管理するポイントのことです。

 

危害要因分析(HA)で洗い出した危害要因の中から重要なものを特定し、危害の発生を防止するために食品中の危害要因を予防、除去、またはそれを許容できるレベルにまで低減するために必要な段階を指します。

 

CCPでは危害要因を取り除くための管理基準、モニタリング方法、改善方法、検証方法などを決めます。
食品では特に温度や時間に対して一定の基準を設けて監視する必要があるため、加熱処理をCCPとして決定することが多くあります。

 

重要管理点の重要性

 

ではなぜ、重要管理点を特定しなければならないのでしょうか。

 

食品の製造工程には工程ごとに数多くの危害要因が潜んでおり、そのすべてに重点的な対応をするのは大変です。
また、危害要因の多くは製造施設内を清潔にする、従業員の手洗いを徹底するなどの一般衛生管理で対応することができます。

 

製造工程、調理工程の危害要因を優先順位付けすることで、本当に重点的な管理が必要な場所を洗い出し、管理を集中させて効率的に安全な食品づくりができるようになります。

 

現場の生産性を維持しつつ、食品事故の発生リスクを低減することが重要管理点を定める理由です。

 

7原則12手順でCCPを行う場所

 

HACCPの7原則12手順

 

【手順1】HACCPチームの編成
製品を作るための情報がすべて集まるよう、各部門の担当者でチームを作ります。

 

【手順2】製品説明書の作成
製品の安全管理上の特徴を示すものを作成します。

 

【手順3】製品の意図する用途および対象となる消費者の確認
製品がどのように使用されるのか、どのような消費者向けの食品なのかを確認します。

 

【手順4】製造工程一覧図の作成
工程について危害要因を分析するために使います。

 

【手順5】製造工程一覧図の現場確認
工程が勝手に変更されていないか、間違いがないかを確認します。

 

【手順6(原則1)】危害要因分析
原材料や製造工程で問題となる危害の要因をピックアップします。

 

【手順7(原則2)】重要管理点(CCP)の決定
製品の安全性を管理する為の重要な工程を決定します。

 

【手順8(原則3)】管理基準の設定
重要管理点で管理する温度、時間などの測定値の限界を設定します。

 

【手順9(原則4)】モニタリング方法の設定
温度計での測定方法など、管理基準の測定方法を決めます。

 

【手順10(原則5)】改善措置の設定
管理基準が守られなかった場合に製品をどうするか(廃棄、再加熱など)、機械にトラブルがあった際にどうするかなどを設定しておきます。

 

【手順11(原則6)】検証方法の設定
設定した管理方法が守られているかの確認方法を決めます。

 

【手順12(原則7)】記録と保存方法の設定
記録用紙の準備と保管方法、保管期間を設定します。

 

重要管理点を定めるのは【手順7】

 

HACCP7原則12手順で重要管理点を定めるのは【手順7(原則2)】です。

【手順6】で実施した危害要因分析で洗い出した危害要因の中から優先順位の高いものを抽出し、重要管理点として設定します。

 

【手順8】で管理基準の特定、【手順9】でモニタリング方法を設定する

 

【手順7】で設定した重要管理点で管理すべき基準値を決めます。

基準値は温度、時間、速度などで、加熱温度を正しく測ること、決められた加熱時間を守ることです。

 

管理基準を決定したら、モニタリング方法を決めます。
モニタリングとは、製品が管理基準に達しているか常時確認することを指し、温度計や時計などを用いて測定し、記録します。

 

例えば、殺菌工程の担当者が、殺菌温度と時間を自動温度記録チャートなどにより、加熱殺菌処理ごとに目視確認し、所定の記録用紙に記録します。

 

重要管理点となるかの判断方法

 

【手順6】で危害要因分析を洗い出し、その中から重要管理点を設定しますが、どのような基準で判断したら良いのでしょうか。

重要管理点の判断方法にはいくつかの方法がありますが、今回は「マトリックス法」による決定方法をご紹介します。

 

マトリックス法を使った重要度の判定

 

マトリックス法では、抽出した危害要因の重篤性と発生頻度を5段階評価し、数値化して重要度を判定します。

 

頻度A 頻度B 頻度C 頻度D 頻度E
1.致死性      1   2    4     7   11
2.重病       3   5    8    12   16
3.製品リコール  6   9    13   17   20
4.顧客の苦情   10   14   18   21   23
5.重要でない   15   19   22   24   25

 

この表は厚生労働省が食肉処理業向けのHACCPの手引書で紹介しているマトリックス表です。
危害要因の重特性と発生頻度をそれぞれ5段階で評価し、マトリックス表の数値で判断します。

 

表内の各評価段階は以下となります。

 

【重篤性(結果)】
1.致死性
2.重病
3.製品リコール
4.顧客の苦情
5.重要でない

 

【可能性(頻度)】
A.繰り返し発生する
B.発生しやすい
C.発生しうる
D.発生するとは考えにくい
E.現実的に発生しえない

 

マトリックス表の数値が10以下の場合、重要度が特に高く、「重要管理点(CCP)の可能性がある」と判断し、管理方法を明確にしておく必要があります。

 

表の数値が10を超えた場合、重要管理点(CCP)となる可能性はありませんが、何らかの管理方法を行う必要があります。

 

メニューを3つのグループに分けチェック方法を決める

 

飲食店などでは食品の調理方法を基準としてメニューを3つのグループに分類する方法があります。

 

第1グループ:非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供する)
第2グループ:加熱するもの(冷蔵品を加熱し、温かいまま提供する)
第3グループ:加熱後冷却するもの、加熱後冷却し再加熱するもの

 

メニューを3つのグループに分けたらそれぞれのチェック項目を作成します。

 

例えば、第1グループの場合、加熱を行わずに提供するため冷蔵庫から取り出したらすぐに提供する、冷蔵庫の温度チェックをする、などの項目を作成して管理します。

 

重要管理点を適切に判断して決定していく

 

重要管理点を判断するうえでは上でご紹介した方法の他に、工程の担当者の意見も踏まえ、担当者が気になる点も重要管理点として設定していく事も大切です。

 

重要管理点を多く設定しすぎては日常業務の妨げとなってしまいますし、少なくしすぎるとリスクを見逃すことになってしまいます。

 

専門家のアドバイスを取り入れつつ、現場の担当者の意見を中心に判断していくとスムーズです。