近年の生活様式の変更に伴い、テイクアウトやデリバリーの需要が大きく高まっています。
中食希望のお客さまの需要にこたえるため、テイクアウトのサービスの継続を検討しているお店も多いかと思います。
テイクアウトやデリバリーは店内で飲食する場合に比べ食中毒発生のリスクが高いため、十分な衛生管理を行う必要があります。
このページでは、飲食店がテイクアウトやデリバリーで意識しておきたいHACCPの衛生管理について解説します。
テイクアウト・デリバリーは調理から食べるまでの時間が長い
テイクアウトやデリバリーは、店内で喫食する場合に比べて調理から喫食までの時間が長いという特徴があります。
そのため、細菌等の増殖の可能性があり、食中毒発生リスクが高いとされています。
また、テイクアウトやデリバリーの場合、店舗内でお客さまが食事しないため、食べ方についてのコントロールができません。
当日中に食べる必要がある食品、要冷蔵の食品、食べるときに再加熱の必要な食品がありますが、食べ方や保管に関してお客さまに十分に注意喚起しても、お客さまがその通りにしてくれるとは限りません。
店舗側で十分に衛生管理をしていても、お客さまが注意に従わず、食中毒が発生してしまう可能性があります。
HACCPの考えを取り入れた衛生管理
小規模店がテイクアウト・デリバリーを行う場合は「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」を実施
「HACCPに沿った衛生管理」は、対象事業者により取り組み内容が2種類に分かれます。
「HACCPに基づく衛生管理」が大規模事業者が対象となっているのに対し、「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」は小規模事業者が対象となり、より簡略化されたアプローチで衛生管理に取り組みます。
HACCPの考えを取り入れた衛生管理では、厚生労働省で定められた「一般的な衛生管理」と「HACCPに沿った衛生管理」の2つの基準を満たす衛生管理が必要です。
一般衛生管理
HACCPの一般衛生管理はすべての食品等事業者にとって基本となる衛生管理のことです。
厚生労働省は一般衛生管理として以下の14項目を挙げています。
事業者はすべての項目についてチェックし、一般衛生管理計画書を作成します。
1.食品衛生責任者等の選任
2.施設の衛生管理
3.設備等の衛生管理
4.使用水等の管理
5.ねずみ及び昆虫対策
6.廃棄物及び排水の取り扱い
7.食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理
8.検食の実施
9.情報の提供
10.回収・廃棄
11.運搬
12.販売
13.教育訓練
14.その他
重要管理点
食の安全を守るうえで重要性が高い食品の調理や提供に関するルールを定めたものを「重要管理」と呼びます。
HACCPでは一般衛生管理計画書に加えて重要管理計画書の作成も求められます。
重要管理計画書を作成する際は、食品を調理・提供の仕方により3つのグループに分けて管理ポイントを定めます。
【第1グループ】
加熱しないで提供する食品
・漬物
・生野菜
・パセリ・レモンなど
加熱を行わず、食品に付着した有害な微生物を熱で殺菌できないため、冷蔵庫から出したらすぐに提供する。
20~50℃の状態が長時間続かないよう、保冷剤などを活用する。
【第2グループ】
加熱して提供する食品
・ハンバーグ
・唐揚げ
・焼き魚
・ごはん
このグループは食肉など、有害な微生物に汚染された可能性のある食品を取り扱うこともあるため、加熱時間や温度が適切か確認する、食品の中心温度を確認するなどしてチェックします。
【第3グループ】
加熱調理後冷却し再加熱、または加熱後冷却したまま提供する食品
・ポテトサラダ
・ソース・たれ
・スープ
・カレー
加熱調理したあと長時間放置すると有害な微生物が急速に増加するリスクがあるため、加熱調理後は速やかに冷却する、再加熱時の加熱時間や温度が適切か確認するなど、温度に十分注意が必要です。
テイクアウト・デリバリーの衛生管理の具体的な対策
厚生労働省では、食中毒等を防ぐため、テイクアウトやデリバリーでの具体的な衛生管理の対策について以下のように示しています。
ご紹介するポイントが実行できているかチェックしてみてください。
メニューと容器をテイクアウト・デリバリーに適したものにする
・持ち帰りや宅配等に適したメニューを選定する
・鮮魚介類など、生ものの提供は避ける
・水分をよく切る、煮詰める、浅い容器に小分けする等、食品が傷みにくい工夫をする
お店の規模に合った提供数にする
・少ない数をこまめに作るなど、なるべく出来立てを店頭に並べる
・注文の都度調理する等、調理から食べるまでの時間を短くする工夫をする
・パッケージは清潔な場所で行う
しっかりと加熱をして提供する
・加熱が必要な食品は中心部まで十分に加熱する
・レアの肉や半熟卵などはテイクアウト・デイバリーでは控える
保冷剤・冷蔵庫・温蔵庫などを活用する
・食中毒菌は20~50℃の環境で増えやすいため、調理した食品を速やかに10℃以下まで冷ますか、65℃以上で保管する
・保冷剤やクーラーボックス、冷蔵庫、温蔵庫などを利用して保管温度を保つ
・小分けによる速やかな放冷をする
消費期限などをお客さまに伝える
・購入した食品は速やかに食べるよう、口頭やシールなどで明記してお客さまに伝える
・アレルギー物質等についてもシール等で情報提供をする
配達に対応するエリアを限定する
デリバリーでは、配達に要する時間を逆算し、配達で対応できるエリアを限定するなどの工夫が必要です。
また、保冷ボックス、保温ボックスを利用して配達することも大切です。
デリバリーを外部業者に委託する場合は、その業者が衛生管理を徹底しているかも委託先選びの重要なポイントです。
ご家庭で安全でおいしい飲食店の料理を楽しんでいただくために
テイクアウトやデリバリーを活用してご家庭で安心して飲食店の料理を楽しんでいただくために、飲食店は安全な食品を提供する必要があります。
HACCPは2021年6月1日からすでに制度化されており、小さな飲食店が衛生管理に取り組む場合は、「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」に取り組むことが求められます。
まだHACCPを取り入れていない事業者はすぐに取り組むことが大切です。
とはいえ、営業をしながら1つひとつの項目について取り組むのは難しい面もあるかと思います。
その場合は、HACCPの専門家に相談するとスムーズです。