2021年6月から完全義務化したHACCPについて、対象となる事業者の範囲が分からない、という方もいらっしゃるかもしれません。
また、自分の事業がどの基準でHACCPを取り入れたら良いのか分からないという場合もあるでしょう。
今回は、HACCPの対象となる事業者と対象外の事業者についてご紹介します。
HACCPの対象となる食品等事業者
HACCPの対象は食品の製造、加工、調理、販売、飲食店などの食品を扱うすべての事業者です。
製造や調理を行っている事業者はもちろんのこと、製造・調理を行っていなくても食品を取り扱っていれば対象となります。
具体的には
・飲食店
・食品製造
・食品加工
・旅館・ホテル
・スーパーマーケット、八百屋
・量り売りの米屋・コーヒー豆店など小分け販売する業種
・食品卸問屋
・冷蔵倉庫
・食肉処理場
・鶏卵選別包装
・仕出し弁当、総菜の調理・販売
・医療福祉施設、学校などの食事提供
のように多岐に渡ります。
HACCPの対象となる一般事業者と小規模事業者の取り扱い
HACCPの対象は食品を取り扱うすべての事業者ですが、大規模事業者と小規模事業者とでは、人員や資金面でHACCPへの対応に差がでてしまいます。
そこで、食品衛生法では、事業の規模ごとに2つの基準を設け、規模に合ったHACCPを取り入れるよう定めています。
HACCPに基づく衛生管理
食品衛生上の危害発生を防止するために、特に重要な工程を管理するための取り組みです。
コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じて計画を作成、管理を行います。
対象事業者は
・大規模事業者(従業員50名以上)
・と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者)
・食鳥処理場(食鳥処理業者(認定小規模食鳥処理業者を除く)
です。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
取り扱う食品の特性等に応じた取り組みで、各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行います。
対象事業者は
・従業員数50名以下の小規模な営業者等
です。
HACCPの対象外となる事業者
HACCPの対象外となる事業者は、食品衛生法施行令で「公衆衛生に与える影響が少ない営業」を行う者となり、以下のような事業者となります。
①農業及び水産業における採取業
②食品または添加物の輸入業
③食品または添加物の貯蔵または運搬のみをする営業(冷凍・冷蔵倉庫業は除く)
④器具・容器・包装の輸入または販売業
⑤1回の提供食数が20食前後未満の集団給食施設
これらの事業者はHACCPの導入対象外ではありますが、食品等事業者として一般的な衛生管理は行う必要があります。
農業とHACCPの関係
農業者の「採取」はHACCPの制度化の対象外です。
つまり、の作物を収穫し、そのまま流通させる場合、HACCPの導入は求められません。
しかし、野菜を切ったり、茹でるなど加工する場合にはHACCPの導入が必要になります。
採取の対象範囲は厚生労働省の「農業及び水産業における食品の採取業の範囲について」で示されています。
採取業の範囲内の業務(HACCPの対象外)
・カットなしでのパック詰め
・皮むき、根切り、下端落とし、へた取り、洗浄、袋詰め、冷凍処理、キュアリング、乾燥
・2分割・4分割などにしたあとにラップなどで包装
・収穫後の保管(冷凍・冷蔵を含む)や、集出荷施設までの輸送
・収穫体験などを提供する観光農園
採取業の範囲外の業務(HACCP導入が必要)
・消費者の利便性などの目的で行うゆで野菜、カット野菜などの調理や切断
・収穫した農産物の卸売施設から小売施設への輸送
・倉庫業(販売前の冷蔵保管)
農家がレストラン営業やジャム、ドレッシング、漬物の製造、販売などを行う場合はHACCPの導入が必要になります。
小規模な営業者等が実施すること
小規模営業者が取り組む内容
小規模な営業者等は、HACCPの考えを取り入れた衛生管理を行います。
具体的には、業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考にして以下の内容を実施します。
①手順書から自分の業種・業態の危害要因を理解する
②手順書のひな形を利用して衛生管理計画と手順書を準備する
③手順書の内容を従業員に周知し、衛生管理の実施状況を記録する
④記録を手順書が推奨する期間保存する
⑤記録等を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見直す
食品等事業者団体が作成した業種別手引書とは
手引書は食品等事業者団体が作成し、厚生労働省が内容を確認したもので、厚生労働省のホームページで公開されています。
自分の業種のものを見つけ、ダウンロードして使います。
なお、厚生労働省のホームページに公開されている手引書に、自分の業種に該当するものが見つからない場合は、原材料や製造工程が類似しており、危害要因が共通する業種の手引書を参考にし、必要に応じて管轄保健所の食品衛生監視員からのアドバイスを得て取り組みます。
HACCP導入の際に専門家のサポートを受けるメリット
HACCPはすべての食品事業者が対象となりますが、導入に苦労している事業者も少なくありません。
自社だけでHACCP導入が難しいという場合は、専門家のサポートを受けるとスムーズです。
ポイントを押さえた計画が可能
HACCPを初めて導入する際、多くの事業者は何から取り組めば良いのか分からず混乱します。
専門家に依頼すれば、事業に合わせてポイントを押さえた計画をサポートしてもらえますので導入もスムーズです。
書類作成のサポートを受けられる
HACCP導入の際は危害要因分析や手順書、記録用紙の作成など、多くの書類を作成する必要があります。
専門家に書類作成を依頼すれば、担当者の業務を妨げることなくHACCPを推進できます。
社内研修会を実施してもらえる
HACCPは全従業員が主体となって取り組む必要があり、従業員が取り組みについて理解していなければなりません。
そのために必要な社内研修会を専門家に依頼することで対象者のレベルに合わせた適切な研修が可能です。
さらに、社員が主体となって行う社内勉強会の内容についてのアドバイスがもらえます。
HACCPはすべての食品事業者が対象
HACCPは一部の対象外の事業者を除き、すべての食品事業者が対象となり、事業規模や内容に応じて適切にHACCPを導入する必要があります。
既に義務化は始まっていますので、まだ導入が進んでいない場合は一度専門家に相談してみることをおすすめします。