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HACCP導入前に知っておきたい一般衛生管理プログラムとは

 

HACCP導入にあたっては、まずは一般衛生管理で土台を作ることが大切です。
では、一般衛生管理ではどのようなことに取り組まなければならないのでしょうか。

 

この記事ではHACCP導入における一般衛生管理について解説します。

 

一般衛生管理とは

一般衛生管理とは「どの食品に対しても行うべき共通事項」のことで、日常業務で取り組んでいる衛生管理の項目を指します。

 

一般衛生管理プログラムは、HACCPを効果的に運用するためにも前提として整備しておかなければならないこととして、製造場所や携わる従業員の衛生管理や食品取扱者の教育や訓練、各工程の記録の必要性などを明記しています。

 

一般的な衛生管理プログラム

一般衛生管理プログラムでは実施する衛生管理を14項目に分けて基準を設定しています。

 

1.食品衛生責任者等の選任
2.施設の衛生管理
3.設備等の衛生管理
4.使用水等の管理
5.ねずみ及び昆虫対策
6.廃棄物及び排水の取り扱い
7.食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理
8.検食の実施
9.情報の提供
10.回収・廃棄
11.運搬
12.販売
13.教育訓練
14.その他

 

では、1項目ずつ詳しく見ていきましょう。

 

1.食品衛生責任者等の選任

 

営業者が「食費衛生責任者」を選任します。

 

食品衛生責任者は調理師や栄養士などの一定の資格を保有しているか、都道府県知事等による講習会を受講している必要があります。

 

食品衛生責任者は営業者の指示に従い衛生管理にあたり、営業者は食品衛生責任者の意見を尊重した運営を行うことが大切です。
また、食品衛生責任者は自治体などの講習会に参加するなど、積極的に食品衛生に関する情報を収集します。

 

2.施設の衛生管理

 

施設の清掃、消毒、清潔保持等に関するルールを決め、実施していきます。

施設内や周辺を清潔な状態に保つことや施設内の湿度と温度を適切に保つことを徹底します。

 

また、トイレは汚染源になりやすい場所ですので、清掃と消毒を定期的に行い、清潔な環境を保ちます。

 

3.設備等の衛生管理

 

機械器具の洗浄・消毒

調理器具に汚れが残っていると、ほかの食品に汚れや有害な菌の汚染が広がる可能性があります。
調理器具や機械は使用の都度洗浄・消毒を行い、保管場所も清潔に保ちます。

 

冷蔵庫・冷凍庫の温度管理

温度管理が悪いと有害な菌が増殖したり、食品の品質が劣化する可能性があるため、毎日決められた時間に冷蔵庫の温度を確認し記録します。

 

冷蔵庫の温度に問題があった場合は異常の原因を確認し、設定温度の再調整あるいは故障の場合は修理の依頼をします。

 

機器類の点検

温度計や圧力計などは定期的に点検をし、常に正しく作動するように管理します。

 

4.使用水等の管理

 

製造に使用する水は水道水または飲用に適する水である必要があります。
氷も同様に飲用に適する水で作ります。

 

5.ねずみおよび昆虫対策

 

ねずみや害虫の駆除作業を年に2回以上実施し、その実施記録を1年以上保存します。
さらに、侵入を防ぐために排水溝に蓋をするなどして対策を行います。

 

6.廃棄物および排水の取り扱い

 

廃棄物は腐敗して周辺に雑菌などの影響を及ぼす可能性が高い為、きちんと区別して適切に廃棄する必要があります。
排水の処理の際にも汚染を広げないよう適切に処理をします。

 

7.食品または添加物を取り扱う者の衛生管理

 

調理担当者が体調不良だと手指などを介して食中毒が発生する危険性があります。

 

また手指に傷がある場合や汚れたままの作業着を着用しての調理作業などは、有害な菌により食品が汚染したり異物混入の原因になる可能性があります。

 

作業スタッフの発熱、下痢、嘔吐など従業員の体調を確認します。
作業着や作業靴など清潔な身だしなみを徹底します。

 

8.検食の実施

 

同一の食品を1回で300食、または1日で750食以上調理する事業者は大量調理施設では検食を実施します。

検食を保存する場合は食品ごとに容器に50gずつ採取し、完全密封したうえで-20度以下の専用冷凍庫で2週間以上保存します。

 

9.情報の提供

 

商品を消費者が安心して食事することができるよう、必要な情報を提供します。

製品に関する消費者からの健康被害等の情報を得た場合、その情報を自治体に提供するよう努めます。

 

10.回収・廃棄

 

万が一製品に危害の恐れが発覚した場合に該当する商品を素早く確実に回収ができるよう、回収の方法や自治体等への報告手順などを事前に決めておきます。

 

回収した製品の廃棄方法も決めておきます。

 

11.運搬

 

製品を運搬する車両、コンテナなどは製品を汚染しないように洗浄、消毒を行い、適切な状態を維持します。
食品以外のものや品目が異なる食品を運搬した車両やコンテナを使用する際は効果的な方法により洗浄、消毒を行います。

 

また、運搬中の温度や湿度の管理にも注意が必要です。

 

12.販売

 

販売数量を見込んで適切な量の仕入れを行います。
また、販売中も適切な環境で販売し、温度管理などを記録します。

 

13.教育訓練

 

勉強会など、定期的に従業に教育を行います。
社内勉強会のほか、社外から専門家を招いて講習会を開くのも効果的です。

 

14.その他

 

仕入れ元や販売先等の記録の作成や自主検査の記録を行います。
記録の保存方法をルール化していつでも振り返ることができるようにしておくことも大切です。

 

一般衛生管理が適正に運用されるためには

衛生標準作業手順(SSOP)を導入する

 

衛生標準作業手順(SSOP)は、設備や備品などのクリーニングやサニテーションなどの衛生管理作業において、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのようにするか」を明確に示す実用編です。

 

SSOPを文書化する際には理解しやすいように作成し、担当者によって解釈が変わることがないよう、具体的な表現を心掛けます。

SSOPを適切に運用することでHACCPの導入がスムーズになります。

 

食品衛生7Sを確実に実施する

食品産業によって微生物の大量発生の危険性は極めて高く汚染が急速に拡大する可能性があります。
衛生管理において微生物による汚染排除は最重要課題の1つとなっており、食品衛生7Sは微生物の徹底排除を目的に運用されます。

 

食品衛生7Sの7つの「S」は、「整理」「整頓」「清掃」「洗浄」「殺菌」「しつけ」「清潔」です。

 

特に「しつけ」は重要な項目として位置づけられており、作業に携わるスタッフ全員がルールの順守や衛生に関する高い意識をもって取り組むことが大切です。

 

一般衛生管理はHACCPの土台となる

一般衛生管理はHACCPの前提や土台となります。
HACCPをいきなり導入しただけでは食品事故を未然に防ぐことはできません。

 

HACCPは生産工程を管理するシステムに過ぎず、施設や設備の環境衛生については管理対象外です。
一般衛生管理により環境衛生が確保されて初めてHACCPが成り立ちます。

 

そのため、まずは一般衛生管理プログラムをしっかりと行っていくことが大切です。