食品事業者でHACCPの導入に苦労されている方は少なくありません。
HACCPは準備する書類も多く、従業員の協力も不可欠です。
製造・調理工程をすべて見直し、管理していく必要があるため、小さなお店や工場では導入に大きな負担がかかります。
HACCPの導入は行政書士などの専門家のサポートを受けるとさまざまなメリットがあります。
今回は、HACCP導入を専門家に支援してもらうメリットをご紹介します。
専門家によるHACCPサポートとは
HACCPを導入する際は、同じ食品業界でも生食を取り扱うなど高度な衛生レベルが求められる工場から小さな飲食店まで、全く異なる管理が必要な施設があり、専門的な知識が必要です。
自社で通常の営業を行いながら法律や衛生管理に関する専門知識が必要なHACCPに取り組むのは困難なケースが多いでしょう。
HACCPには行政書士やコンサルタントなど、HACCPに関する知識を持った専門家がいます。
専門家は専門知識を活かして事業所それぞれの特性に合わせて最適な管理方法を提案し、HACCPの導入をサポートしてくれます。
専門家の仕事はアドバイスのみを行うものから、実務面で全体的にサポートを行ってくれるもの、HACCP認証の申請代行までさまざまです。
自社にとって必要なサポートはどのようなものか、事前に明確にしておくことが大切です。
専門家にHACCP導入のサポートを受けるメリット
行政書士などの専門家にHACCP導入のサポートを受けると主に以下の4つのメリットがあります。
確実にHACCPを導入できる
専門家の支援を受けることで、間違いのないHACCPを確実に導入することができます。
自分でHACCPに取り組もうとすると、多くのことが初めてのことなのでどうしても抜けや漏れが出てしまいます。
製造・調理の工程中にあるハザードを効率よく、見逃すことなく対策できます。
また、見逃しがちな外部環境が由来のハザードにも対応できる点がメリットです。
事業に専念できる
HACCPでは「一般衛生管理計画書」「一般衛生管理実施記録」「重要管理計画書」「重要管理計画実施記録」などの書類を作成し、日々記録・保存する必要があります。
一般衛生管理では原材料の受入れ、冷蔵庫・冷凍庫の温度管理、交差汚染、器具の洗浄、トイレの洗浄、従業員の健康管理など、多くの視点から衛生管理を計画し、記録を実施していかなければなりません。
これらの書類はひな形は存在しますが、工場やお店に合わせたものに一部修正していく必要があります。
普段の営業を行いながら多数の書類を用意するのは大変です。
専門家のサポートがあれば書類作成業務を大幅に軽減し、本来の事業に専念できます。
従業員の負担を軽くできる
重要管理点の洗い出し作業では、すべての製造工程から特に衛生管理で重要なポイントをピックアップします。
このとき、食品の原材料の受入れから箱詰め、出荷するまでのすべての製造工程をピックアップします。
この工程は、実際に現場で行われている方法を洗い出す必要があり、作業を行っている従業員の協力が不可欠です。
しかし、何の準備もなく従業員に製造工程の洗い出しを依頼すると従業員の負担が大きくなってしまいます。
事前に専門家によりHACCPについての研修を行い、重要性を共有したうえで協力を得ること、できる限り管理者側で準備を行ったうえで従業員全体で取り組むことで負担を軽減できる点は大きなメリットです。
法律の専門知識がなくても取り組める
食品衛生管理上でトラブルが起こると、「知らなかった」では済まないケースがあります。
食品衛生法や法令で定めるルールを守り、書類できちんと管理する必要があります。
行政書士は書類作成の専門家ですので、書類の不備により起こるトラブルを防げます。
特に法律関係や書類作成に不安がある場合はHACCPを得意としている行政書士に相談するとメリットがあります。
HACCPを導入しない場合の罰則
専門家を入れてHACCPを導入するメリットをご紹介しましたが、HACCPを導入しないでいると罰則はあるのでしょうか。
HACCPは2021年6月から制度化されている
2018年6月、食品衛生法の改正法案が可決され、そのなかにHACCP導入の制度化が盛り込まれています。
施行は2020年6月1日ですが、1年の移行期間が設けられ、2021年6月1日からはHACCP導入の完全制度化となっています。
対象は食品の製造・加工・調理・販売などを行う、すべての食品事業者です。
事業所の規模や内容により、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」のどちらかを導入します。
食品衛生法には罰則の明記はない
HACCP導入は食品衛生法によって定められていますが、未導入の場合について明確な記述はされていません。
食品衛生法では罰則に関しては「都道府県知事に委ねる」としており、都道府県の条例によって罰則の有無が決定されることになっています。
都道府県の条例によっては罰則の可能性
都道府県が定める条例における罰則に関する記載は地方自治法第14条に記載があります。
「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反したものに対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の形又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」
つまり、条例によっては2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
営業許可取得・更新に影響が出る場合がある
罰則がなくても、HACCPの制度化により飲食店などの営業許可の取得や更新に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
営業許可を取得・更新する際にはHACCPの衛生管理計画をチェックされる可能性があります。
HACCPに対応できていないと保健所から指導されたり、HACCPを導入せずに食品事故が起こった場合、厳しい処分が下る可能性があります。
HACCP導入は専門家のサポートを受けるとメリットが多い
HACCP導入は専門家のサポートを受けながら取り組むと、さまざまなメリットがあり、スムーズに導入を進められます。
既にHACCPの制度化は始まっており、近年の気温の高い環境下で食品事故を防止するためには、早めに取り組む必要があります。
まだHACCPの準備を進められていない場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。