2018年6月13日に食品衛生法等の一部が改正され
2021年6月から原則としてすべての食品事業者にHACCPに沿った食品衛生管理が義務化されました。
HACCPによる食品衛生管理の方法は事業規模や業種によって異なりますが
パン屋・ベーカリー、製パン業ではHACCPの考え方に基づいた衛生管理が適用されます。
そこで、パン屋さんのHACCPの考え方に基づいた衛生管理の方法を解説します。
HACCPは原則としてすべての食品事業者が対象
HACCPの対象は原則としてすべての食品等事業者です。
事業規模は問わないため、大きな給食施設から個人経営の小さなカフェまでが対象となります。
ただ、食品に携わる事業の中でも食費に正常のリスクが低い事業はHACCPの対象外となります。
HACCPの対象外となるのは以下の業種です。
・食品・食品添加物の輸入業
・冷蔵。冷凍倉庫業以外の食品・添加物の貯蔵又は運搬のみに従事する事業
・常温で長期保存をしても品質劣化で食品衛生上の危害発生のリスクがない事業
・合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
・1回の提供食数が20食未満の給食施設
・農業など
HACCPは原則として上記以外の全ての食品事業者が対象となりますが
事業規模や業種、業務の内容によって衛生管理計画の内容が異なります。
したがって事業者は事業に適した衛生管理を行う必要があります。
HACCPの義務化でベーカリーが行うべきこと
HACCPの義務化に伴い、ベーカリーが行うべきことは以下の3つです。
・衛生管理計画の策定
・計画に基づく実施
・確認・記録
HACCPの実施には具体的な管理内容を記載したリストが必要となる為、まずは衛生管理計画の策定を行います。
そして、計画に基づき日々衛生管理を実施し、内容を確認・記録していきます。
衛生管理計画の策定
日々の業務と管理を見える化する為に衛生管理計画書が必要となります。
その為、まずは事業者がHACCPの考え方に基づいた衛生管理計画書を準備します。
それぞれの管理方法をマニュアル化することで従業員全員に周知され、お店全体の衛生レベル向上につながります。
リストは業種によって異なりますので、事業の内容に合わせたものを作成しましょう。
計画に基づく実施
作成した衛生管理計画に則り、日々の業務の衛生管理を行っていきます。
管理項目がリスト化されていることで漏れることなく確認することができ
従業員全員がルーティーンの中で取り組むことができます。
営業中など忙しくて決められた時間にチェックをし忘れてしまう、ということもあるかもしれません。
そのようなことを防ぐ為にも規定の時間にチェックが行われているかを管理する役割の人を決めるなど対策を行います。
確認・記録
チェックしたら必ず内容を記録します。
保健所の調査が入った時、衛生管理を実施していても記録が残っていなければ管理体制を証明することができません。
いつでも見せることができるようにチェックの都度必ず記録をしておきましょう。
パン製品で気を付けなければいけない健康危害要因
パンは高温のオーブンで焼成され有害微生物が死滅するのに十分な条件が揃っている為
一般衛生管理をしっかり行っていれば健康被害について過度な心配は必要ありません。
出来上がったパンは製造日当日に売り切るのがふつうで
お客様が翌日に食べることを想定しても焼成後40時間以内に消費されることから
有害微生物によるリスクは低いという考え方が一般的です。
ただ、パンの中には焼成後に具材やクリーム等を加える商品もあり
焼成後の加工過程における食品衛生管理をおろそかにすると健康上のリスクが高まります。
パン製品で気をつけなければならない健康被害要因は以下のようなものです。
パン製品全般に共通する危害要因
・アレルゲン
・異物混入
・ノロウィルス
焼成後加工するパン製品で注意すべき危害要因
・病原性大腸菌
・サルモネラ
・黄色ブドウ球菌
パン製造で行う衛生管理
パン製造で行う衛生管理には「一般衛生管理」と「重点衛生管理」に分けられます。
まず一般衛生管理を計画に行います。
一般衛生管理の徹底は健康上の危害防止ができるだけでなく、健康上の危害がない異物混入を防止する為にも必要です。
次に、特に重要な工程上の管理をHACCPの考え方を取り入れた重点衛生管理として徹底します。
一般衛生管理
一般衛生管理では日々の業務に対してそれぞれ衛生管理計画を作成します。
・原材料の受け入れを管理
・原材料等の保管方法を管理
・冷蔵庫・冷凍庫の温度管理
・アレルゲンの交差汚染対策
・適正表示の管理
・施設の管理
・設備と器具の保全管理
・トイレの衛生管理
・従業員の健康管理
・有害生物対策
・廃棄物・排水の取扱
・製品回収
・売り場の衛生管理
重点衛生管理
HACCPの考え方を取り入れたパン屋さんでの重点衛生管理は3つのカテゴリーで管理していきます。
1.パン製品全般に共通する重点衛生管理
お客様の健康に危害が出る可能性のある内容を管理します。
・アレルゲン対策
・金属・硬質プラスチック対策
・ノロウィルス対策
2.焼成後加工するパンの重点衛生管理
二次汚染によりお客様の健康に危害が出る可能性のある内容を管理します。
・病原性大腸菌対策
・サルモネラ対策
・黄色ブドウ球菌対策
3.製造工程上のHACCPの考え方を取り入れた重点衛生管理
お店のメニューを製造方法でグループ分けし、安全に提供できる温度を設定して管理します。
・焼成後加工しないパン(食パン・フランスパン)
・焼成後加工しないパン(ソーセージパン・あんぱん・クリームパン)
・焼成後加工するパン(サンドイッチ)
・焼成後加工するパン(調理パン)
・ドーナツ類(ドーナツ・カレーパン)
ベーカリーは製造工程の異なるパンが多数あるのが特徴です。
すべての商品を分類して管理方法を徹底しましょう。
行政書士によるHACCP導入サポートを活用するのがおすすめ
パン屋・ベーカリーのHACCPの考え方に基づいた衛生管理の方法について解説しました。
HACCPは導入義務に従わなかった場合
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課される可能性がありますので無視できません。
とはいえ、他の業務を行いながらHACCPの導入するのは難しいこともあるでしょう。
しっかりと導入する為には専門家のサポートを受けながら行うと漏れの無い管理体制を構築する事ができます。
HACCP導入に取り組まれる場合にはHACCP導入に特化している行政書士のサービスを利用するのがおすすめです。