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小規模事業者がHACCPを導入する3つの手順・やるべきこと

 

2021年6月の食品衛生法改正により、すべての食品事業者はHACCPに基づいた衛生管理を導入することが制度化されています。
規模の大きい事業者は資金や人員も豊富なことから、すでにHACCPの導入は完了しているところが多いでしょう。

 

しかし、個人飲食店や商店、町工場など、小規模な食品事業者は準備が進んでいないところもあるでしょう。

 

今回は、小規模事業者がHACCPを導入する3つのステップについて解説します。

 

小規模事業者のHACCP

HACCPの導入は事業規模や従業員の人数を問わず、原則としてすべての食品事業者が対象となります。
しかし、規模の大きい事業者と従業員数名で運営している小さな事業所が同じレベルの衛生管理を適用するのは現実的ではありません。

 

そのため、衛生管理の実施内容は「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つに分けられます。

 

HACCPに基づく衛生管理

・大規模事業者
・と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者)
・食鳥処理場(認定小規模食鳥処理業者を除く)

 

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

・小規模な営業者等
・食品を製造または加工し、加工した食品を隣接した店舗で販売するもの
・分割した食品を容器包装に入れて販売する営業者
・食品の製造、加工、貯蔵、販売、処理する事業者のうち、食品等の取り扱いに従事するものが50人未満である事業場

 

小規模事業者がHACCPを導入する3つのステップ

STEP1 事業内容に合わせた手引書を入手する

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行うためには、まずは手引書を入手します。

 

小規模事業者は業界各団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考に実施していくことになりますので、自分の業界に合った手引書を厚生労働省のホームページからダウンロードします。

 

自社に該当する業界の手引書がない場合は、近い業界の手引書を参考にしてください。

 

STEP2 手引書を参考にしながらHACCPを導入する

手引書を入手したら、内容に沿って衛生管理計画書と手順書を作成します。
HACCPは従業員全員で取り組む必要があります。

 

手順書の作成時には現場スタッフの声を取り入れながら、現場の作業に合ったものを作成する必要があります。

 

STEP3 地方自治体や事業団体の研修に参加する

小規模事業者はHACCPの導入が手さぐりになりがちです。
本当にこれでいいのか、と疑問に思いながら取り組んでいる事業者も少なくありません。

 

そこで、国や地方自治体、業界団体で開催されている研修会への参加をおすすめします。
必要に応じてこのような研修に参加すると、HACCPを導入していくうえでの疑問を解決できる可能性が高くなります。

 

また、場合によってはHACCP導入をサポートしている行政書士などの専門家にコンサルティングを受けるのも良いでしょう。

 

HACCP導入の流れ

小規模事業者のHACCP導入の流れは
①衛生管理計画の作成
②手順書の作成
③記録・保存
となります。

 

2021年6月から衛生管理計画書、手順書、衛生管理チェック表の記録の3つの文書は保健所のチェック対象となります。

 

保健所がチェックしたときに文書が作成されていなかったり、記録が正しくとられていなかったりする場合は、「HACCPを導入していない」とみなされてしまうおそれがあります。

 

①衛生管理計画の作成

衛生管理計画を作成する際には、「一般衛生管理」に加え、事業所の「重要管理点」を決め、衛生管理計画書にまとめます。

 

一般衛生管理

一般衛生管理では従来通り調理環境の衛生管理を行います。

1.原材料の受け入れ
2.冷蔵・冷凍庫の温度の確認
3.交差汚染・二次汚染の防止
4.従業員の健康管理・手洗い・衛生的作業着の着用

を中心に管理します。

 

重要管理点

さらに、重要管理点で調理工程など、一般衛生管理以外の範囲でさらに徹底管理するべき重要なポイントを挙げ、対策を記載します。

 

飲食店の重要管理は温度管理を明確にしておきます。

 

食中毒菌の繁殖を防ぐためには温度管理が重要となりますので、提供するメニューを非加熱のもの、加熱するもの、加熱後冷却し再加熱するものの3つのグループに分け、管理方法を決定します。

 

②手順書の作成

食材の搬入から提供までの、清掃、洗浄、消毒、食品の取り扱い、調理方法等について具外的な方法を記載した手順書を作成します。

手順のなかで特に厳重管理が必要な「重要管理点」に関してはそのリスクなどについても記載します。

 

手順書の作成により衛生管理を明確に行えるほか、手順が平準化されるため、スタッフの業務の品質が一定水準を維持できるなどのメリットもあります。

 

③記録・保存

手順書に基づき、製造・営業を行い、衛生管理の実施状況を記録します。

 

また、実際にスタッフが手順書に従って製造を行ってみて、改善すべき点は改善し、新たな注意点が見つかった場合は手順書に記載します。

 

記録は都度、正確に記載し、いつでも取り出せる場所に保管します。

 

小規模事業者がHACCPを導入する際の3つの疑問点

HACCP導入に関して新しい設備の導入は必要?

HACCPの目的は製造工程・調理工程を管理する仕組みをつくることですので、施設や設備など、ハード面の整備ではありません。

 

つまり、HACCPに取り組むにあたって施設や設備を改修したり新たに導入したりすることは必須ではありません。

 

ただし、害虫が侵入する可能性がある隙間が開いている、冷蔵庫が老朽化していて温度管理が難しい、という場合など、食品衛生に関わる部分では改修や新たな設備の導入が必要になります。

 

スタッフに資格は必要?

HACCPの導入にあたって、新たに資格を取得する必要はありません。
ただし、HACCPの関連資格を持ったスタッフが在籍していると、より正確に効率的にHACCPの導入を進められます。

 

HACCP関連の資格には

・HACCP普及指導員
・HACCP管理者資格
・HACCPリーダー

などがあります。

 

小規模事業者でもHACCP認証を受ける必要がある?

HACCP認証には自治体や民間団体、事業者団体など、さまざまな認証があります。

 

HACCP認証はブランディングや対外的なアピールの施策の1つとして取得するメリットはありますが、小規模事業者が必ずしも取得する必要はありません。

 

認証を受けると第三者から衛生チェックを受けられるなどのメリットも多くありますが、費用がかかり事業運営の負担になってしまう場合もありますので、認証取得を目的とするのではなく、まずはしっかりとHACCPに取り組むことをおすすめします。

 

HACCPの導入により効率的な衛生管理が可能

HACCPを導入し、衛生管理計画書、手順書を作成し、日々の記録を取ることで効率的で高いレベルの衛生管理が可能となります。

 

HACCPは既に制度化されているため、まだ導入していない事業者は早急に取り組む必要があります。

 

しかし、小規模事業者が取り組む場合は手探りになりがちです。
必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら取り組んでいくとスムーズです。