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HACCPを導入しないとどうなる?罰則・デメリット

 

2021年に完全義務化が開始されているHACCPですが、導入の遅れに対するペナルティを心配されている事業者の方もいらっしゃるでしょう。

 

そこで、この記事ではHACCPを導入しなかった場合の罰則やデメリットについて解説します。

 

HACCP導入の義務化はいつから?

HACCPは2021年6月からすべての食品関連事業者を対象に完全義務化となっています。2018年6月に改正食品衛生法が公布され、HACCPの導入が制度化されました。

 

改正法の施工は公布日から2年を超えない範囲でと定められており、2020年6月から義務化開始となりましたが、2020年の施行後1年間は猶予期間が設けられ、2021年6月から完全義務化とされています。

 

HACCP導入の対象

HACCP導入の対象となるのはすべての食品事業者です。
具体的には以下となります。

 

HACCP導入の対象となる事業者

HACCP導入の対象となるのは食品の製造、加工、調理、販売、飲食店など、食品を取り扱うすべての事業者です。
大規模な工場やスーパーマーケットだけでなく、個人経営の飲食店もHACCPを導入する必要があります。

 

また、1回の提供食数が20食以上の学校や病院など営業ではない集団給食施設もHACCPに沿った衛生管理の実施が求められています。

 

とはいえ、大規模事業者と小規模な事業者とでは人員や資金面で差があります。
そこで、食品衛生法では事業規模に応じて「一般事業者」と「小規模事業者」に分けて基準が設けられています。

 

・一般事業者

従業員数が50名以上の企業が対象となり、「HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)」を採用します。
Codexの「HACCP7原則」に基づき、食品事業者自らが使用する原材料や製造方法等に応じ、計画の作成・管理を行います。

 

・小規模事業者

従業員数が50名未満で一般衛生管理の対応範囲内の業種が対象となり、「HACCPに沿った衛生管理(旧基準B)」を採用します。
各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略されたアプローチによる衛生管理を行います。

 

HACCP導入の対象外となる事業者

「公衆衛生に影響が少ない事業者」はHACCPに沿った衛生管理を行う必要はありません。
対象外の事業者は以下のような事業者です。

 

1.食品又は添加物の輸入業
2.食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし冷凍・冷蔵倉庫業は除く)
3.常温で長時間所存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業
4.合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
5.器具容器包装の輸入又は販売業

 

HACCP導入義務化に違反した場合の罰則

HACCPを導入していない場合、食品事業者にはどのような罰則があるのでしょうか。

 

HACCP未導入に関して罰則の明記はない

HACCPの義務化については食品衛生法で定められていますが、HACCP未導入自体の罰則に関して明確な記述はありません。

 

食品衛生法では罰則に関しては「都道府県知事に委ねる」と記載しています。
つまり、罰則があるかないかは、都道府県の条例により決定されます。

 

食品衛生法に違反した場合の罰則

HACCP導入に関して食品衛生法違反と判断された場合、「3年以下の懲役、300万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

 

食品衛生法第71条~79条によれば罰則の対象となるのは具体的に次のような違反を行った場合です。

1.人の健康を害する食品または添加物や、法令で承認されていない添加物を使用した場合
2.厚生労働省等が販売を禁止した食品を販売した場合
3.厚生労働省等の命令に反し、人の健康を害する食品または添加物を廃棄しなかった場合
4.厚生労働省等の禁止命令を守らずに営業を続けた場合

 

各都道府県の条例に違反した場合の罰則

食品衛生法では、地方自治体が独自に規定をつくり、2年以内の懲役または100万円以下の罰金のペナルティを科すことが可能です。
また、地方自治体のルールに違反した場合、営業停止処分等の行政処分の対象となる可能性もあります。

 

HACCPが調査されるタイミング

HACCPが保健所から調査される可能性のあるタイミングには次のようなものがあります。

1.定期立入検査
2.営業許可の更新

 

これらで行われる検査でHACCP導入が不十分と評価されると、必要に応じて衛生計画の内容や実施に対する指導や助言が行われることがあります。

 

HACCPを導入しないことのデメリット

HACCP導入が未対応の場合、罰則に関して法律に明確な記述はありませんが、事業の運営上さまざまな影響を受けることがあります。

 

営業許可・更新に影響

HACCP導入の義務化により、営業許可の取得や更新に大きな影響が出ます。

 

飲食店の新規出店など、新たに営業許可取得や更新が必要な場合には、「衛生管理計画書」が必要です。
また、更新時には「実施記録」が必要となります。

 

これらの書類がなければ営業許可や更新ができません。
また、更新の際に実施記録がない場合は衛生管理に不備があるとしてペナルティがある可能性があります。

 

このようにHACCPに対応していないことで営業ができなくなる可能性があります。

 

海外進出で不利になる

HACCPは既に世界各国で導入が進んでいます。

 

アメリカでは1997年から、EU加盟国では2006年から、カナダやオーストラリアではアメリカよりも早い1992年から順次HACCPが義務付けられています。

 

このような環境下で、HACCP未対応の企業の海外進出は不利となります。

 

HACCP義務化を実施している国のほとんどが輸入要件にHACCPが導入されていることを盛り込んでいるため、HACCPを導入していなければ海外進出ができない可能性があります。

 

企業へのイメージダウンの可能性

消費者の立場から考えると、HACCP未対応の事業者に対しては「衛生管理が不十分」「安心安全な食の提供に対する意識が足りていない」などのマイナスイメージを持つ可能性があります。

 

また、HACCPに対応していないことは消費者だけでなく金融機関や取引先などの信頼低下につながるリスクがあるため、売り上げの低下や新規採用への影響など、事業を運営するうえで不利に働くおそれがあります。

 

一度失った信頼を取り戻すには時間がかかるため、HACCPの導入と日々の衛生管理・記録はしっかりと行うことが大切です。

 

HACCP未導入の場合は早急に対応を

HACCPは既に義務化されています。
まだ未導入の食品事業者は早急に対応をする必要があります。

 

導入の相談先に関しては自治体の相談窓口や、HACCPのサポートを専門とする行政書士などの専門家などがありますので、まずは相談をしてみて、サポートを受けながら導入するとスムーズです。