2020年6月からHACCPが制度化されましたが、一般的な飲食店や食品製造従事者が50人未満の食品事業者では
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を導入します。
その際、どのような書類が必要になるのか、どのように作成したらいいのか、
疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で用意すべき必要書類にはどんなものがあるのかご紹介します。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で必要な書類
新規営業許可申請・更新時には新規営業許可申請書類一式の作成提出に加えて、
・一般衛生管理計画書
・重要管理計画書
の作成とその計画に沿った実施が必要です。
さらに
・一般衛生管理の実施記録表
・重要管理の実施記録表
を毎日事業所で記録して保管する義務があります。
一般衛生管理計画書
一般衛生管理計画書は衛生管理のルールを見える化するものです。
一般衛生管理は調理以外の衛生に必要なポイントを7つに分けて、
それぞれ「いつ」「どのように」「問題発生時の対応」を決めます。
7つの項目は以下のようなものです。
1.原材料の受入の確認
2.庫内温度の確認(冷蔵・冷凍)
3-1.交差汚染・二次汚染の防止
3-2.器具等の洗浄・消毒・殺菌
3-3.トイレの洗浄・消毒
4-1.従業員の健康管理
4-2.手洗いの実施
これらの項目についてそれぞれの事業に合わせて計画を立て、実行可能な方法を作成していくことが重要です。
そうでないと、計画したのに実行できていない、ということになってしまい、衛生管理の意味がなくなってしまいます。
重要管理計画書
HACCPの考え方は食品製造・調理の全体における工程管理ですが、
調理・製造時の管理についての計画が「重要管理」となります。
安全な料理を提供するためのポイントは調理・加工中の温度管理です。
普段から提供している食品を3つ温度管理のグループに分け、
それぞれのメニューの重要なチェックポイントを決めていきます。
「メニューのグループ分け」
グループ1:冷蔵品を冷たいまま提供するもの
グループ2:加熱して提供するか、加熱後に温存保存して提供するもの
グループ3:加熱と冷却を繰り返すもの
通常、この3つのグループに加えて調味料や海苔など、
温度管理の必要がない「常温保存グループ」に区分けされる食品が存在します。
重要管理計画書で大切なことは取り扱う食品の性質・特質に合わせて適切なチェック体制を計画することです。
こちらも一般衛生管理計画書と同様に適切なやり方であっても実行できなければ意味がありません。
実際に自分たちで実行できる内容の計画書を作成するようにしましょう。
一般衛生管理の実施記録
一般衛生管理計画書で計画した項目について毎日記録します。
業務終了時に各衛生項目についてチェックし、実施結果を「良」または「否」のいずれかで記載します。
実施結果が「否」の場合は特記事項に問題の内容、対処内容などを記載します。
実施結果が否になった場合、否になった原因を具体的に記載することが大切です。
これはできなかった結果よりもなぜできなかったのか、
どうしたら良になるのかを検証し、改善していくための重要な資料となります。
結果だけにとらわれず、悪い所はしっかりと記録し
事業所のメンバー全員で改善方法を考えていくようにしましょう。
重要管理の実施記録
重要管理の実施記録でも計画した項目について毎日業務終了時に記録をします。
グループ分けしたメニューごとについて重要管理計画に基づく実施ができたかどうか、衛生管理の実施結果を記録します。
実施結果は「良」または「否」のいずれかを記載し、
実施結果が「否」の場合には特記事項に問題の内容、対処方法などを記載します。
HACCPの必要書類の作成方法
HACCPで必要な書類をご紹介しましたが、この書類は自分で作成できるのか、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
HACCPの考えを取り入れた衛生管理の場合、自分で書類を作成することが可能です。
その際には手引書やテンプレートなどを参考にすると分かりやすいです。
厚生労働省の手引書を参考にする
HACCPの必要書類の作成にあたって厚生労働省や各業界団体が作成した手引書を参考にすると便利です。
手引書には衛生管理計画書のひな型や書き方のポイントなどがまとめられています。
厚生労働省では各業態・業種に合わせ、合計110種類の手引書が用意されていますので、
当てはまるものを参考に作成すると良いでしょう。
自治体のテンプレートを活用する
厚生労働省の手引書のほかにも自治体もテンプレートを作成していますので、これを活用することもできます。
自治体の公式サイトでは衛生管理計画書のほか、衛生管理記録の様式も公開しています。
衛生管理だけでなく、万が一食品事故が発生した場合の対応方法に関する内容も含めると
計画書の作成は非常に手間がかかります。
必要に応じて自治体のテンプレートも活用すると準備がスムーズになります。
専門家のアドバイスのもと作成する
HACCPはお店や工場によって条件がさまざまで、管理するポイントも違ってきますし、
従業員の人数によって教育方法も変わります。
そのため、HACCPに取り組んでいくと分からないことが出てくることがあります。
その際は保健所などに相談することはもちろんですが、
行政書士などの専門家のアドバイスのもと作成することをおすすめします。
HACCPの導入を何件も取り扱っている専門家なら分からないことにも実践に基づいたアドバイスをしてくれますので、
必要な場合は専門家と一緒に導入を進めていくと良いでしょう。
書類作成は専門家に依頼するとスムーズに
HACCPの考えを取り入れた衛生管理で必要な書類をご紹介しました。
記録をつけて保存する、だけでは終わらずに1年に1回や半年に1回など、
一定期間ごとに検証することはHACCPで重要な要素です。
定期的に見直しを行い、お客様だけでなく、従業員にとっても安心の衛生管理を徹底していきましょう。
書類作成の際は厚生労働省などのホームページにひな形が公開されていますが、
事業所に合った形にカスタマイズして使うことが大切です。
また、事業所の衛生管理に合った管理計画書、実施記録の作成で迷うこともあるかと思いますので、
HACCPに詳しい行政書士などの専門家に相談して作っていくと良いでしょう。