小さな飲食店・個人店がHACCP(ハサップ)を取り入れるには?
食品衛生法の改正により、食品の製造、加工、調理、販売など、食品を扱う業者にHACCP導入の義務化がされました。
これによりすべての食品事業ではHACCPの制度に従った取り組みを行う必要があります。
しかし、家族経営の飲食店など、個人店ではどのようにHACCPに取り組めば良いのでしょうか。
この記事では個人の飲食店のHACCPの取り組み方について解説します。
個人の飲食店では「旧基準B」での衛生管理を行う
「基準A」と「基準B」とは
HACCPに沿った衛生管理では以前は「基準A」と「基準B」という2つの衛生管理の基準がありました。
HACCPの基準Aは衛生管理体制を構築し、厳格な内容の基準で衛生管理を行います。
ところが、基準Aの衛生管理基準は小規模事業者にとって大きな負担となります。
そこで、基準Aを簡略したアプローチを認めたものが「基準B」です。
現在では基準Aは「HACCPに基づく衛生管理」、基準Bは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」となっています。
個人の飲食店でHACCP認証を取得する場合、多くの場合「旧基準B」での衛生管理をすることで認証を得ることが可能です。
旧基準AとBの違い
「旧基準A(HACCPに基づく衛生管理)」
コーデックス委員会のHACCPガイドラインで示された「7原則12手順」によって導入された衛生管理を行うことを指します。
「基準B(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)」
一般衛生管理を中心として、HACCPの考え方に基づいて可能な範囲で重点管理点を設置して衛生管理を行うことを指します。
旧基準AとBの適用対象
「旧基準A」
・大規模事業者
・と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者)
・食鳥処理場(食鳥処理業者)
大規模事業者とは従業員50名以上の事業者を指します。
これに加え、と畜業や食鳥処理業といった厳格な衛生管理が求められる業者は旧基準Aの対象となります。
「旧基準B」
旧基準Aに該当しない食品関連の事業者で、従業員数が50名未満の事業者が該当します。
「小規模な営業者等」に該当する事業者とは以下のいずれかを満たす業者が該当します。
1.食品等の取り扱いに従事する者の数が50人未満の小規模な製造・加工等の事業場
2.製造・加工した食品の全部または大部分を併設された店舗において小売り販売する営業者
3.飲食店等の食品の調理を行う営業者
4.容器包装に入れられた食品または包まれた食品のみを貯蔵、運搬、販売する営業者
5.食品を分割して容器包装に入れ、または包んで小売販売する営業者
小規模な事業所に配慮されている項目
旧基準Bに該当する個人経営のお店等の小規模な事業者ではHACCPチームの編成ができないなど、HACCPの取り組みが規模の都合上できない場合があります。
そこで、小規模事業者には以下のような項目が配慮されています。
危害要因分析の負担軽減
HACCPでは危害要因を分析し、それを資料としてまとめる必要がありますが、基準Bの事業者には状況に応じて分析表の提出は不要とされています。
モニタリング頻度の低減
HACCPでは危害要因を分析した上でその危害要因を取り除くための管理基準を設定し、設定した管理がきちんと実施されているかのモニタリングを行います。
モニタリングは常時行う必要がありますが、人員が少ない小規模事業者にとっては負担になることがあります。
そのため、モニタリングの頻度を減らしたり、モニタリング方法を工夫することで負担の軽減を図ることができます。
記録の作成・保管の簡素化
HACCPでは記録方法や文書の保管方法について決定し、モニタリングの結果から改善を実施するPDCAを回していく必要があります。
しかし、小規模な事業者にとってはこれも負担になる可能性があるため、簡易的なもので良いとされています。
個人の飲食店では何をしなければならないのか
では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは具体的にどのような取り組みを行っていけば良いのでしょうか。
HACCP導入・実施のためには
1.衛生管理計画の策定
2.計画に基づく実施
3.確認・記録
の3つの項目を行っていきます。
1.衛生管理計画の策定
飲食事業における衛生管理計画はどの食品についても行うべき共通事項である「一般衛生管理」と食品の調理方法に合わせて行うべき事項である「重要管理」があります。
「一般衛生管理」
一般衛生管理は
・原材料の受け入れ
・冷蔵・冷凍庫の温度の確認
・交差汚染・二次汚染の防止
・従業員の健康管理。衛生的作業着の着用
などを中心に管理します。
「重要管理」
飲食事業に置ける重要管理のポイントは温度管理です。
食中毒を起こす菌は、10℃~60℃の危険温度帯で増殖しやすいため、食品を危険温度帯からいかに外すかが重要となります。
また、ほとんどの食中毒菌は75℃で1分加熱すると死滅するため、加熱処理では温度と時間を意識します。
食品の調理法によって重要管理のポイントが異なるため、メニューを以下の3つに分類します。
・第1グループ…非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供するもの)
・第2グループ…加熱するもの(冷蔵品を加熱し熱いまま提供するもの)
・第3グループ…加熱後冷却するもの、または、加熱後冷却し再加熱するもの
各グループの特徴を加味してそれぞれのメニューの管理方法を考えます。
2.計画に基づく実施
策定した衛生管理計画に従い、日々の衛生管理を行います。
マニュアルを作成しておくとスタッフ全員が同じレベルで作業を行うことができるため、衛生レベルの向上を図ることができます。
3.確認・記録
実施した項目を記録に残しておきます。
記録に残していない場合や、後からまとめて記録していることが明らかな記録方法の場合、「やっていない」と見なされてしまいますので、確実に記録を残しておくことが大切です。
記録は1年間は保存しておきます。
保健所にHACCPに関する記録の提示を求められる可能性がありますので、いつでも取り出せるように管理しておきましょう。
小さな飲食店に合わせたHACCPの取り組みを行いましょう
小さな飲食店にとってHACCPの導入は多少の手間と時間がかかります。
しかし、食の安全が叫ばれる中でHACCPをしっかりと取り組んでいくことが一定のメリットがあると言えるでしょう。
小さな飲食店は旧基準Aのような取り組みをする必要はなく、HACCPの考え方に基づき、事業所に合った取り組みを行っていくことが大切です。
滋賀県守山市のHACCP導入は昌直行政書士事務所にご相談ください。
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