-食品衛生法改正で変わったこととは何か?HACCP導入の制度化とは-
食品衛生法は、飲食による健康被害の発生を防止するための法律です。
食品安全基本法や食品表示法などとともに、食品に関する法律として、事業者の義務や規則の基準を定めており、食品等を扱う事業者は十分内容を押さえておかなければなりません。
その食品衛生法は2018年に15年ぶりの大幅な改正がされました。
今回の改正ではHACCP導入の制度化など、事業者にもさまざまな対応が求められています。
ここでは改正食品衛生法では何が変わったか、HACCP導入の制度化とはどのようなものかについて解説します。
改正食品衛生法のポイント
改正食品衛生法には以下の7つのポイントがあります。
それぞれ簡単に解説していきます。
広域な食中毒への対策強化
広域的な食中毒事案の発生、拡大の防止のため、関係者の連携と協力義務を明記するとともに、国や地方自治体の連携や協力の場を設置し、緊急を要する場合には厚生労働大臣が協議会を活用し、広域的な食中毒事案への対応に努める、というものです。
HACCPに沿った衛生管理の制度化
HACCPは、事業者が食中毒等の危害要因をあらかじめ把握し、原材料の入荷から製品の出荷までのすべての工程において、危害要因を除去するために特に重要なポイントを管理し、食品の安全性を確保する衛生管理手法です。
HACCPの制度化により、すべての食品事業者はHACCPを導入することになりますが、事業規模に応じて適した内容の衛生管理を行うことになります。
従業員50名以上の食品事業者、と畜場、食鳥処理場は、「HACCPに基づく衛生管理」を、従業員50名以下の小規模事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実施します。
特別の注意を要する成分等を含む食品による健康被害情報の収集
厚生労働省が指定する「指定成分等」を含む食品を取り扱う場合、指定成分が含有した食品が健康に被害を生じ、または生じさせる恐れがある旨の情報を得た場合には、この情報を都道府県知事等に届け出る必要があります。
食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
食品用器具、容器包装の安全性に国際的な整合性を確保するため、規格が定まっていない原材料を使用した器具や容器包装を販売禁止とし、安全が担保されたもののみを使用できます。
営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設
営業を開始しようとする場合、常温で保存可能な包装食品の販売等を行う場合以外ではあらかじめ「営業届出」をする必要があります。
これにより、自治体が営業者の把握と指導をしやすくなりました。
また、従来の「営業許可」が必要な業種は34種から32種となりました。
食品のリコール情報の報告制度の創設
食品等の自主回収の情報は、行政への報告が義務付けられるようになりました。
リコール報告の対象は
・食品衛生法に違反する食品
・食品衛生法違反のおそれがある食品
です。
営業者から報告を受けた都道府県は、厚生労働省に報告し、厚生労働省は国民に情報を公表します。
輸入食品の安全確保
輸入食品の安全証明制度が充実化されました。
輸出国で検査や管理が適切に行われた旨を確認し、輸入食品の安全性を確保するため、HACCPに基づく衛生管理や乳製品、水産食品の衛生証明書の添付を輸入の要件とします。
HACCPとは
2018年の食品衛生法の改正によりHACCPの制度化が始まりました。
開始は2020年6月からですが、2020年から1年間は猶予期間とし、2021年6月から原則としてすべての食品事業者に適用されることとなっています。
HACCPは、「HA(Hazard Analysis)」と、「CCP(Critical Control Point)」で構成される衛生管理手法です。
もともと米国で生まれた食品安全における衛生管理の方法でしたが、現在では国際的な衛生管理の基準として世界中に広まっています。
原材料の入荷から製品の出荷までの製造工程におけるリスクを管理する手法で、従来の抜き取り検査に対し、製造工程全体から危害要因を分析し、特に重要な点を管理します。
管理するなかで異常が発生すればすぐに対応が可能なため、効果的で迅速な対応につながりやすいという特徴があります。
HACCPの手順
HACCPを構築するためには「7原則12手順」に従って行っていきます。
手順1:HACCPチームの編成
手順2:製品説明書の作成
手順3:意図する用途及び対象となる消費者の確認
手順4:製造工程一覧図の作成
手順5:製造工程一覧図の現場確認
手順6(原則1):危害要因分析(HA)
手順7(原則2):重要管理点(CCP)の決定
手順8(原則3):管理基準(CL)の設定
手順9(原則4):モニタリング方法の設定
手順10(原則5):改善措置の設定
手順11(原則6):検証方法の設定
手順12(原則7):記録と保存方法の設定
HACCP義務化に対応しなかった場合の罰則
現行の食品衛生法では、HACCPの未実施による罰則は規定されていません。
しかし、「罰則などの規定は各地方自治体に委ねる」としており、都道府県や市区町村の条例に罰則が設けられる可能性があります。
地方自治体は地方自治体法により条例で懲役2年、100万円の罰金を上限とする罰則の設定が認められています。
そのため、地域によっては罰則が課される可能性もあります。
罰則が設けられていなくても、保健所からの指導を受けることになりますので、対応していないと営業上不利になる可能性が高くなります。
HACCP導入のメリット
HACCPを導入することで、主に次の6つのメリットが得られます。
①安心安全な食品を提供できる
②従業員の衛生に対する意識が向上する
③ルールが明確化することにより従業員教育が平準化する
④作業効率のアップが期待できる
⑤食品事故を未然に防げる
⑥万が一事故が発生してしまったときに自己防衛につながる
HACCPは国際基準で展開されており、しっかりと対応することで対外的なアピールに一定の効果が期待できます。
企業価値が高まり、取引先への信頼につながるほか、人材確保にも役立つでしょう。
最新の法律に対応していく
食品衛生法の大幅な改正により、さまざまなルールが設定されました。
特にHACCPの制度化は大規模な食品工場だけでなく、個人の飲食店も対象となり、すべての事業者に対応が求められています。
HACCPの導入には手間がかかるため、日常の営業をしながらでは対応できないという方も少なくありません。
しかし、保健所からの指導を受ける可能性もありますので、専門家のサポートを受けながら取り組んでいくことをおすすめします。
滋賀県守山市のHACCP導入は昌直行政書士事務所にご相談ください。
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